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気になる言葉

イーハトーブ



 1896年に岩手県で生まれた有名な童話作家に宮沢賢治という人がいます。彼は岩手をこよなく愛した童話作家、詩人でしたがわずか37歳で短い生涯を終えました。

 彼の生前には作家としてそれほど評価されることはなく、生前に出版されたのは詩集「春と修羅」、および童話集「注文の多い料理店」の二つだけでした。

 しかし、宮沢賢治の名は死後になって世にでることとなります。


 1996年の生誕100年を期して、彼の生まれ故郷である岩手県や全国各地でさまざまな催し物が開催され、彼が書き残した童話や詩集が編集、出版されました。

 近年、子供にも大人にも心豊かな感動を呼び起こす彼の作品は多数の書籍だけでなく、テレビやイベントなどで紹介されるようになり、大きなブームともなっています。

 さて、宮沢賢治が愛した故郷、岩手県を彼は理想郷と位置づけ、イーハトーブと呼ぶようになります。

 宮沢賢治は世界共通語として知られるエスペラント語を学んでいました。以前には、彼の故郷である岩手の地名は、旧仮名遣いでは「Ihate」と記述されていました。

 彼は、この地名をエスペラント風に発音した言葉として「Ihatov」という新語を創り出しました。彼はこの言葉に「理想郷」をダブらせていたのです。
 この言葉の発音は、彼自身の心の中でも次々と変化し、「イーハトヴ」→「イーハトーヴ」→「イーハトーヴォ(イーハトーボ)」→「イーハトーブ」のように変遷して最終的に「イーハトーブ」という形となっています。

 彼の最初の童話集「注文の多い料理店」の広告チラシに、宮沢賢治自身が書いたと思われる文章として、次のような一節が残っています。

 「イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。」