宮沢賢治が愛した故郷、岩手県を彼は理想郷と位置づけ、イーハトーブと呼ぶようになります。彼は、この地名をエスペラント風に発音した言葉として「Ihatov」という新語を創り出したのです。彼はこの言葉に「理想郷」をダブらせていたのです。
この言葉の発音は、彼自身の心の中でも次々と変化し、「イーハトヴ」→「イーハトーヴ」→「イーハトーヴォ(イーハトーボ)」→「イーハトーブ」のように変遷して最終的に「イーハトーブ」という形となっています。
彼の最初の童話集「注文の多い料理店」の広告チラシに、宮沢賢治自身が書いたと思われる文章として、次のような一節が残っています。
「イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。」
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