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〔クレアチニン〕 |
クレアチニンは、筋肉へのエネルギーの供給源であるクレアチンリン酸の代謝産物であり、血清生化学検査では、次のような略号で表示されます。
・CRE |
Crは主に筋肉内で産生され血中に入ると腎臓の糸球体で濾過されると、ほとんど再吸収されることはなく、尿中に出てゆきます。 |
血清Cr値が正常範囲を軽度に逸脱する場合には、次のような疑いがでてきます。
・血清濃度が高くなる脱水や心不全 |
〔クレアチン〕 クレアチンは、窒素を含有する有機物の一種で、肝臓や腎臓、膵臓、脾臓などの臓器で、「アルギニン」「グリシン」「メチオニン」の3種のアミノ酸から合成されます。また、肉や魚などの食物やサプリメントから摂取することもできます。 体内で合成されたクレアチンは、血流に乗って、95~98%が骨格筋に運ばれます。筋肉のエネルギー源として骨格筋組織に貯蔵されます。残り数%のクレアチンは、心臓や脳、精巣などに蓄えられます。 体重70kgの健康な男性のクレアチン体内量は約120~140gで、一日に約2~3gが消費され、その分が合成・摂取されて、バランスが保たれています。 |
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〔クレアチンリン酸とATP〕 筋肉内に取り込まれたクレアチンの一部分は、「クレアチンキナーゼ」という酵素の作用で「クレアチンリン酸」という物質に変換され、エネルギー源として貯蔵され、筋肉が瞬発力を必要とする瞬間などに活用されます。 人間が筋肉を使って運動するときに、筋肉の収縮に使用されるエネルギーは「アデノシン三リン酸(ATP)」という物質から供給されます。このATPは、「アデノシン」+三つの「リン酸」から成っています。 |
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〔クレアチニン生成とエネルギー放出〕 ATPが持つ三つの「リン酸」のうち一つを放出して「アデノシン二リン酸(ADP)」という物質に変化するとき、「クレアチニン」という物質が生成され、同時に多量のエネルギーを放出します。 いい方を変えると、ATPが分解されると「アデノシン二リン酸(ADP)」と「クレアチニン」という物質になり、そのとき多量のエネルギーが放出され、それが人体を動かしたり脳を働かせる原動力となるのです。特に、筋肉運動で瞬発力を発揮するためのエネルギーとなるのです。 筋肉中に存在するATPの量はごく少量なので、このエネルギーは主に「瞬発力」を発揮するために使われますが、直ぐに消費し尽くされてしまいます。そこで、新たな「クレアチン」が供給されて、不足状態となったATPを補給するための反応が起こります。 |
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〔ATP再生とクレアチニン〕 筋肉中に存在するATPの量はごく少量なので、このエネルギーは主に「瞬発力」を発揮するために使われますが、直ぐに消費し尽くされてしまいます。そこで、新たな「クレアチン」が供給されて、不足状態となったATPを補給するための反応が起こります。 こうしてクレアチンは、役割を終えると、最終的に「クレアチニン」という物質に変化します。即ち、クレアチニンは、筋肉運動のエネルギー源となるクレアチンが代謝されてできた物質で、尿酸や尿素窒素と同様に老廃物のひとつとなり、腎臓から尿に排せつされることになります。 筋肉で生成されたクレアチニンは、血液に運ばれてすべて腎臓に移動します。クレアチニンは腎臓の糸球体で濾過されますが、尿素窒素とは違って尿細管ではほとんど再吸収されずに、尿中に排泄されます。 このためクレアチニンの血中濃度は腎臓の重要な機能である「濾過機能」の指標として用いられています。腎臓に何らかの疾患があって、腎糸球体の濾過能低下や尿排泄障害発症時には、クレアチニンが血清中に停滞し、血清中残存「クレアチニン濃度」が上昇することになります。
尚、血中クレアチニン濃度の上昇、あるいは低下で想定される疾患などとしては、次のようなものがあります。
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〔クレアチニン係数〕 尿中クレアチニンの排泄量は、年齢や体重などによる筋肉の発育と運動量とに関係していて、個人差があります。このため、尿中へのクレアチニン排泄量を「クレアチニン係数」という指標に変換して、腎機能状態の把握に用いることがあります。 クレアチニン係数は、24時間中分の尿の全量に対して、尿中に排泄されるクレアチニンの量を、体重1kg当りに換算した量です。 クリアチニン係数は、A、Bを次のように定義するとき、下記の式で定義されます。 A=(24時間尿中 クレアチニン排泄量)[mg/日] B=(体重)[kg] 〔クレアチニン係数〕=A/B クレアチニン係数に変換すると、比較的個人差が少なくなり、健常成人男性では、ほぼ20~26、女性では14~22の範囲の値をとります。このクレアチニン係数の有用性は、他の蓄尿を必要とする検査において、採尿が正しく行われたかの確認や、筋肉の発達度の推定などで発揮されます。 しかし、クレアチニン係数は、感度が悪いといわれ、これに代わる指標として、後に述べる「クレアチニン・クリアランス」が一般的に使用されます。 |
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〔血清クレアチニン濃度〕 血清クレアチニン濃度は、腎臓における尿の濾過機能低下に応じて上昇します。そのため、腎機能低下状況の確認や腎障害、尿路閉塞性疾患などの経過観察、治療効果の確認に活用されます。また、血液の人工透析が必要な場合の透析の導入時期決定などにも重要な判断因子となります。 ところで、腎糸球体の濾過機能(GFR)の代謝能はとても大きくて、その能力が正常時の半分以下にまで低下しないと、血清中のクレアチニン濃度の上昇は認められません。逆にいえば、血中クレアチニン濃度が上昇しはじめたときには、腎臓疾患はかなり進行しているということになります。 一般的に、腎機能の50%以上が失われた慢性腎不全状態では、血清クレアチニン濃度が2[mg/dL]以上になります。 血中クレアチニン濃度がわずかに増加していると認められる段階でも、腎糸球体の濾過機能(GFR)は、正常時の30~40%程度にまで低下しています。 尿蛋白が持続的に陽性となり、腎機能が正常の20%~30%以下になってしまうと、もはや完全な「腎不全」の病態となり、食事制限などを行っても、血清クレアチニン濃度が正常化することはなく、常に軽度上昇状態が続きます。 また、腎機能が正常の5~10%以下まで低下すると、末期腎不全の状態と考えられ、血清クレアチニン濃度は非常な高値を示し「尿毒症」の症状を呈するようになります。血中クレアチニン濃度の正常値は概ね 1.0[mg/dL]以下ですが、この値が5.0[mg/dL]超となるようなら、腎透析(人工透析)が不可欠となります。 |
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〔クレアチニン・クリアランス〕 クレアチニン・クリアランスは、腎臓が体内に蓄積した老廃物を、尿として排泄する能力を調べる検査です。別ないい方をすれば、この方法はクレアチニンなど身体内に蓄積した老廃物を、尿中に排出する効率を測定する検査で、腎機能の低下を早期に検出できる方法です。 クレアチニン・クリアランスの値が概ね、100[ml/min]以上であれば正常です。通常、クレアチニン・クリアランスが、50[ml/min] 以下となれば、慢性腎不全と診断され、もしも10[ml/min]以下という状態であれば、人工透析による治療が必要な状態です。 クレアチニン・クリアランスは、次の計算式で求められます。 Ccr=(U * V)/ S * 1.73/A Ccr:クレアチニン・クリアランス [ml/min] U:尿中クレアチニン濃度 [mg/dL] V:1分間尿量[ml/min] S:血清中レアチニン濃度 [mg/dL] A:対表面積[m2] また、係数の1.73は、日本人の平均体表面積[m2](日本腎臓学会2001)です。 ここで、体表面積A[m2]の計算式はいろいろと提案されているが、Du Bois の式は次のようになっています。 A[m2]={(体重[kg])**0.425}*{(身長)**0.725}* 0.007184 クレアチニン・クリアランスの正常値の範囲は、下表のようになっていますが、通常、男女ともに、100[ml/min]以上であれば正常とされます。
40歳を過ぎると、10年、年齢が上がるごとに、クレアチニン・クリアランス値は約10%低下するのですが、想定以上に低すぎるときは腎機能が低下していることを意味します。 低下の度合いが、50~70[ml/min]で「軽度障害」、30~50[ml/min]で「中等度障害」、30[ml/min]以下で「高度障害」となります。高度障害の状態では、尿毒症を呈するようになり、極めて危険な状態です。 クレアチニン・クリアランスが異常値を示す場合、次のような疾患・病気が考えられます。
クレアチニン・クリアランス検査は、相当な手間がかかるため、簡便に推定する方式が考案されています。このような方法は、あくまでも簡便法なので、明らかに腎機能低下が疑われる状態では、正式な方法でクレアチニン・クリアランス値を求めることが推奨されます。 ここでは、コッククロフトとゴールトにより提唱された算定式を示します。コッククロフトとゴールトの計算式では、血清クレアチニン濃度と年齢、体重を用いて、値を推定します。この推定式は、18歳以上の成人用で、乳幼児や60歳以上の筋肉質の人には適用されません。また、女性では、算出結果の値を0.85倍します。 Clcr=(140-Age) * Weight / 72 / Scr Clcr:クレアチニン・クリアランス [ml/min] Scr:血清中レアチニン濃度 [mg/dL] Weight:体重[kg] Age:年齢[-] |