酸素をたっぷり含む動脈血は左心室から大動脈へと送り出されます。全身を回って二酸化炭素や老廃物を受け取った血液は、大静脈に集まり右心房に戻り、右心室から肺動脈に送られます。肺で新鮮な酸素を受け取ると、肺静脈から左心房に戻って、再び左心室から全身へと送り出されます。 |
刺激伝導系は、心臓の筋肉の一種で、電気信号を一定間隔で発生させる能力を持っています。また、普通の筋肉とは異なり、筋肉が収縮するための電気信号を素早く伝えることができます。 |
◆〔不整脈のパターン〕の説明。 |
ペースメーカーが必要になる不整脈の主な病気は、徐脈を来たす状態です。脈拍数が毎分30以下になったり、5秒前後以上の時間、心臓が停止した場合、脳や心臓などの重要臓器への酸素供給量が不足し、臓器の活動能力が低下します。 |
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洞不全症候群 |
洞結節の機能が低下し、必要な脈拍数を発生できなくなります。 |
房室ブロック |
刺激伝道系中継基地である、房室結節の働きが低下し必要な脈拍を心房から心室に伝えられなくなる状態。 |
その他の原因 |
頻脈性の不整脈発作や他の心臓病のための治療薬投与やアブレーションなどの処置が不可欠の場合、治療による徐脈の悪化をきたしたり、徐脈の悪化が十分予想される場合。 |
◆〔ペースメーカーの進歩の歴史〕の説明。 |
心臓ペースメーカーの試作が始まったのは、1930年代のことです。しかし、ようやく臨床試験が行われるようになるのは、1957に体外装着式のペースメーカーが開発されてからになります。 |
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18世紀 |
人工心臓ペースメーカーの着想期は、18世紀に遡ります。この頃、動物の組織には電気刺激が影響していることが発見され、筋肉の収縮には電気エネルギーが関係していることが分かりました。 |
19世紀 |
19世紀に入り、フランス革命の時代、斬首された罪人の心臓に電気刺激を与える実験が行われました。電気刺激で心拍が再開することや、加える電気刺激の速度によって、脈拍数が変えられることが分かりました。 |
1932年 |
1932年に「Hyman電気刺激装置」なるものが開発されました。磁力を応用した手回し式のもので、とても大きく、重量も7.2kgもあるような装置でした。このとき初めて「人工ペースメーカー」という名称が使われました。 |
1952年 |
1952年、Zoll は、緊急時の心蘇生のために、胸壁に付着させた皮膚電極に、75~150V、2m秒幅のパルス刺激を与えると心拍を制御できることを報告しました。これを機に、心臓ペースメーカーの臨床的有用性が着目されるようになります。 |
1957年 |
この時代になると、心臓外科手術が行われるようになりましたが、手術に伴う完全房室ブロックという難問に遭遇するようになります。1957年、Wierich らは、心臓の表面胃電極を固定し、体外式の心臓ペースメーカーを用いて、心臓外科手術を行うようになります。
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1958年 |
1958年、Furman と Robinson が心臓の内部に電極を埋め込む、心内膜電極という方法を用いて、ページングを行う方法を考案し、その後、広く用いられるようになりました。 |
1958年10月 |
1958年10月、Elquist と Senning は、世界で初めての、完全埋め込み式の心臓ペースメーカーを開発しました。このペースメーカーは体外から充電することができましたが、電池寿命は20分足らずでした。このペースメーカーのページング速度は完全一定式でした。つまり、たとえ自発心収縮があっても、速度を変更することはできませんでした。 |
以降、現在まで |
初期のペースメーカーは、一定回数だけ電気刺激を与えるタイプでしたが、現在では、デマンド型と呼ばれる脈拍が少なくなったときにだけ刺激を発するタイプが主流となっています。 |
◆〔電磁波の影響〕の説明。 |
現代の心臓ペースメーカーは、患者の心臓の状態や重症度などにより、電気刺激のモードを最適になるようにプログラミングを変更できるようになっています。モードの変更には、体外からコード化された電磁波を照射して行うことができるので、患者はペースメーカーを体内に埋め込んだままの状態で行えます。 |
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携帯電話の影響 |
携帯電話からの電磁波が心臓ペースメーカーに影響を与え、誤動作させる可能性があるといわれますが、全世界ベースで、これまでにそのような事故が発生した例は報告されていません。 |
注目すべき機器 |
多くの電磁は発生装置では、現在まで問題が生じたり、実被害がでたとの報告はないものの、いくつかの機器では、ある程度の影響がでている実例もあり、ペースメーカ使用者は注意は必要となります。 |
その他の機器 |
心臓ペースメーカーに影響を与える可能性のあると指摘された、下記のよう電磁波を発生させる機器は、多くありますが、現在までのところ、そのような実例の報告は全世界でもありません。
・電波センサー式自動ドア、電動シャッター |