現在主流の第三世代携帯電話が使用している周波数帯は2GHz帯であるが、第四世代携帯電話では、これより高い周波数帯を使用することになる。この実現には、格段の技術的進歩が必要となるが、NTT DoCoMoは既に5Gbpsのパケット信号伝送実験に成功している。
第四世代での携帯電話が実現すれば、携帯電話においてもハイビジョン並みの高画質映像の送受信が可能となる。携帯電話で映画を一本ダウンロードしたいと思っても、3.5世代なら2時間以上もかかってしまうが、第四世代なら何と数秒で済んでしまうという。こうなると、必要なデータの全てをデータセンターに保存しておき、使いたいタイミングでダウンロードして使うというやり方が可能になるだろう。
第四世代携帯電話の周波数帯が世界無線通信会議(WRC)において、最終的に決定されれば、日本は2010年以降に商用サービスを開始することになる。超高周波の電波を使用すると、電磁波の伝搬特性により電波の直進性が強くなるために、どうしてもサービスエリアが狭くなったり、屋内への電波も届きにくくなる問題が発生する。実用段階では、これらに対するインフラの整備も必要となる。
ここで一つ深刻な問題がある。情報通信分野でよく知られた定理に「シャノンの定理」と呼ばれるものがある。これは、情報の伝送速度は、占有する電磁波の帯域幅に比例し、かつ、SN比(信号信号電力に対するノイズ電力の比)にも依存するという定理である。数式的には、次のように表される。
C=W・log2(1+S/N)
(ここで C:ビット毎秒、W:帯域幅、S:信号電力、N:ノイズ電力)
この式が主張するものは、限られた通信帯域幅での通信速度の超高速化は、S/N比を極度に高める必要があることを意味しており、高い消費電力を必要とするということである。モバイル通信環境での実用的問題の一つは、これに耐えるだけの電源容量の確保ということになる。実用化に向けて、高性能の燃料電池などの技術開発が不可欠の要件だ。
ドコモが計画している第四世代携帯電話の通信速度は、第三世代に比べて二千倍、3.5世代に比べても十倍も高速だという。現行の光ファイバーによる家庭用インターネット接続の二倍の速度である。
ところで、過去の技術開発などの経緯から、第三世代の携帯電話での通信方式は統一されず、「日本勢+欧州勢」対「アメリカ勢」という構図になっているが、第四世代では、全世界共通の規格とすべく話が進んでいる。最終的に誰が開発した技術が採用されるのか、各国が凌ぎを削っているのだ。日本人としては、ドコモの技術が採用されることを期待したいものである。
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