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〔亭主を早死にさせる方法〕

 高齢化がますます進み、女性は世界一の長寿国となった日本の最近の大きな話題は熟年離婚問題です。

 昔、まだ旦那が若いとき、家庭を守る主婦は「亭主元気で留守がいい!」などといっていたものでした。

 しかし、年月が流れ、お互いに寄る年波に負け始めてくると、女性の考えも変わってくる。

 いよいよ亭主が定年退職し、毎日まいにち家にいるようになるからだ。旦那からすれば、40年も働きずくめでようやく手にした安穏の日々が、女性には鬱陶しく感じるものらしい。

 そんなに亭主が邪魔なら、いいことを教えてやる。アメリカ人のジーンマイヤーという人が、女房族に捧げる言葉集「亭主を早死にさせる十箇条」なるものを発表したのだ。世の女房族はこれをよく読んで、亭主を少しずつ弱らせる方法なども理解し、亭主を早目にあの世に送り出すといい。そうすれば、ばら色の天国のような余生、数十年が楽しめるというものだ。

 長年、息をつく暇もなく働き続け、ようやく定年退職した旦那・亭主・お父ちゃんなどというものの運命は実に情けないものである。

 いままで良妻賢母よろしく、家庭を守ってきた奥方、奥さん、主婦、女房が、豹変するのである。はっきり言って、亭主はいないよりは、いた方がましだが、さりとて、実に邪魔な存在として扱われる始末である。

 ここでは、そんな女房族が考える、「旦那に早く死んでもらいたい」という願望について、本当にそれでいいのかという反省を促すお話を作ってみたので、それを紹介しています。



妻たちは本気で亭主が邪魔だというのか。

〔大体、旦那が自分の家に居て何処が悪い!?〕

 女房どもは、旦那が働き続けた数十年間、家にいて、友達とデパート歩きをし、美味しいレストランがあると聞けば、早速試食に出かけ、有名歌手のコンサートがあると聞けば着飾ってディナーショーに参加し、確かに多少の食事の世話や掃除・洗濯・猫の世話・金魚の世話はするものの、早めの昼ごはんを食べ終われば、気持ちよく昼寝して、すき放題にやってきたではないか。

 そんな女房にとって、本当に亭主は自分の家にいちゃいけないのか?

〔挙句の果てが熟年離婚かよ。〕

 最近、暇になったから、老人会の旅行があると聞けば多少そわそわして、というか、いそいそと出かけるのは確かだが、この歳になって町内のおばあさん達とバス旅行をするくらいのことは許してくれたっていいだろう。

 宿について、ひと風呂浴びて、夜の宴会ともなれば、そりゃカラオケのひとつやふたつくらいは歌うし、今までそんなことはなかったけれど、ひょっとしたらチークダンスくらいするかも知れないが、それにしたってそれ以上何があるわけでもないんだ。

 そんな、可哀想な亭主が本当に邪魔なのか?

 挙句のはてに言う言葉が、熟年離婚だなんて、いくら何でも、今まで苦労してきた亭主にそんな仕打ちはないだろうに。


亭主を早死にさせる十箇条

〔第1条:太らせなさい〕

 早いとこ、厄介払いをして気楽な未亡人になりたいなら、とにかく、夫を思い切り太らせなさい。25キロ以上太らせることに成功したら、10年は早く自由を手にできます。

 たっぷり太らせることに成功すれば、旦那は、今流行のメタボリックシンドロームとやらになってくれて、糖尿病だの、高脂血症だの、動脈硬化だの、高血圧だのに確実になってくれるよ。

〔第2条:酒をしこたま飲ませる〕

 太らせるだけじゃ不安なら、お酒をしこたま飲ませなさい。ウイスキーだのウオッカだの、強めのお酒をしっかり用意しておき、旦那が飲み干したら、すかさず何度でもグラスを満たしてあげるのです。チーズやサラミなど栄養たっぷりのおつまみもしこたまだすこともお忘れなく。

 お酒は、少量なら薬になっても、たっぷり飲ませれば身体にとっては毒になるから、旦那の体内では、活性酸素が大量に発生して、肝臓の細胞などをうまく破壊してくれます。肝臓が肝硬変になり、やがて肝がん発症という具合にうまくいくことでしょう。

〔第3条:いつも座らせる〕

 太らせ、お酒を飲ませた上で、とりわけ大事なのは、夫をいつも座らせておくことです。何かの気まぐれで、夫が散歩に行こうなどと世迷言を言い出したら、楽しみにしているテレビ番組の笑天だとか、何でも鑑定団だとか、がもうすぐ始まりますよと注意してあげなさい。水泳とかテニスをやりたいなどと言い出したら、いい歳をして何をいうのとからかいなさい。

 運動さえさせなければ、人間の身体はどんどんと衰えていきますから、希望の叶う日も近いというものです。

〔第4条:飽和脂肪酸をたくさん食べさせる〕

 幸い、ビーフが好きな旦那なら、上等な霜降り肉のような飽和脂肪酸たっぷりに食事を欠かすことなく腹いっぱいに食べさせなさい。卵も毎日2個じゃ足りないですね。3個は食べさせましょう。朝は卵焼き、昼にはゆで卵、夜にはおでんの卵という具合です。こうすれば、コレステロールは天井知らずに上昇すること請け合いです。

 新鮮な脂肪分は、不飽和脂肪酸としてエネルギー源になります。また血液サラサラ効果もあります。脂肪が古くなると飽和脂肪酸となって、体にはコレステロールがたっぷり蓄積し、間違いなく動脈硬化の原因になります。コンビニ弁当などで時間の経った揚げ物などは飽和脂肪酸の塊にも見えてきます。そうです、こういうものを積極的に食べさせればよいのです。

〔第5条:塩分の多い食事に慣れさせる〕

 塩分の多い漬物を欠かすことなく食べさせなさい。食事の味付けはできるだけ濃くして、それに慣れさせなさい。こうすれば、確実に血圧も上がります。血圧が高くなったら塩分をより多くして、血圧をもっと上げてやればよいのです。グループフルーツは血圧を下げる効果があるので、もってのほかです。決して食べさせてはいけません。

〔第6条:コーヒーをがぶがぶ飲ませる〕

 コーヒーは食物繊維が多く入った飲み物だから、便秘を防いだりしてダイエット効果があります。しかし、コーヒーを出すとき、砂糖と濃い目のミルクをたっぷり入れるのです。毎日、3度も4度も砂糖入りコーヒーを飲んでいれば、糖分は確実に血糖値をあげてくれるでしょう。

 とにかく、コーヒーはがぶがぶ飲ませなさい。お茶が好きなら、お茶も一日5杯以上は飲ませましょう。できれば、ただのお茶じゃなくて、砂糖入りの紅茶を飲ませることがお奨めです。

〔第7条:タバコをすすめる〕

 簡単で、これほど効果確実なものもありません。とにかく、タバコをすすめなさい。未亡人希望者のあなたにとって、旦那のタバコは最良の味方です。

 タバコを吸う人は吸わない人に比べると、肺がんで死亡してくれる確率が50倍にもなります。まして、ヘビースモーカーなら確実に効果があります。

〔第8条:夜更かしをさせる〕

 夜更かしも効果があります。とにかく、夜更かしさせなさい。深夜番組を見せたり、頻繁に来客を招きいれると、旦那はくたくたに疲れてくれる筈です。こうして、寝不足が蓄積すると、血行も悪くなり、突然死も期待できるというものです。過労と睡眠不足は夫を早目にあの世へ送り出してあげるよい方法になります。

〔第9条:休暇旅行に行かせない〕

 油断してると、旦那はたまには休暇旅行や町内会の慰安旅行に行きたいなどと言い出します。温泉に浸かりでもしたら、身も心もリフレッシュしてしまい、まずいことになります。ですから、気まぐれで休暇旅行などに行きたいなどと言い出させないことです。

〔第10条:最後の仕上げに…しょっちゅう文句を言う〕

 まあ、ここまでくれば、もう大丈夫なんだけど、最後の仕上げとして、心行くまで文句を言い続けましょう。来る日も来る日もあなたの小言が続けば、旦那はストレスがたまり、だんだん、体調が悪くなることでしょう。旦那はちっとも仕事をしないだとか、たまには食事くらい自分で作れだとか、お金のこととか、子供のこととかで文句を言い続けると効果抜群だとかいいます。


心からの女の願い

〔真実の女の願い〕

 奥さん、本当にご主人を早く死なせたいなら、これで方法は分かりましたね。でも、もう一度考え直してみてください。本当にそれでいいんですか? 会社で亭主が上役にはどやされ、部下には馬鹿にされながら苦労に苦労を重ねていたこの数十年、随分いい思いをしてきましたよね。メロドラマに昼寝付き、ときにはお友達と小旅行に食べ歩き。。。

 もしも、気が変わって、今度は亭主に、いい思いをさせてやりたいなんて思うのであれば、上の十箇条の反対をすればいいんです。さあ、どちらを選ぶか、それはあなたしだいです…

 女房が亭主を大事にするのは決して悪い話じゃないですよ。あなたの本音がどんなものなのか、それを考える秘訣を伝授しましょう。先ずは、下のお話を読んでみて、そして、ご自分がいい奥さんだったか、ひょっとして悪妻だったかなんて考えてみるのもいいでしょう。

 これを読んでみると、あなたが良妻賢母なのか悪妻・悪女なのかわかるかも知れません。

〔病院で〕

 あるとき、あるところに女がいました。女は、いつも世話になっている知り合いの医師のところにくると、真剣な顔つきでこんなお願いをしました。

 『定年退職ということで、うちの旦那、毎日まいにち家にへばりついていて、ウザくて仕方ないんです。先生、うまいこと亭主が死んでくれるようないいお薬をもらえないでしょうか?』

 他でもない、この女は長い年月、うちの病院に足を運んできてくれたことだし、何とかしてあげたいものだと考えてみた。医師はしばらく考えた後で、奥の薬の置いてある部屋へ入っていった。そして、かなりの量の粉薬を持って戻ってきた。

 『…この薬なんだけど。これは絶対秘密だからね。こないだも奥さんと同じようなことを言ってきた女性がいてね。これを処方してやったんだよ。間違いなく、よく効くからね。でも、使い方には十分、気をつけないとだめだよ。ほんの少しずつ使わないとバレるからね』

〔我が家で〕

 薬を手に入れたことで、女はすっきりと気分がよくなった。早速、家に帰ると、直ぐに試してみなくちゃと思い、その薬をその夜の料理に入れてみた。それだけじゃ足りないかもと思いながら、コーヒーやジュースにも混ぜてみた。来る日もくる日も旦那の食事に入れ続けるのだった。

 実のところ、今までろくに料理なんかしてくれたこともない女房の最近の変わりように、旦那はちょっと驚き、怪しみもした。『おい、最近、何か俺に隠してないか?』と。

 そんな疑いを取り繕うようにと、女は満面の笑顔をつくり、旦那に接し、熱烈なキスもした。毎日まいにちし続けた。

 旦那は最初は少々気持ち悪かったのだが、だんだん嬉しくなってきて、女房の料理を褒めてみる気にもなった。お世辞なんかじゃなかった。元々は料理下手だった女の料理の腕前がいつのまにか上達していたのだ。

 女は、今日もまた、旦那の口にあの薬を入れたいがために、愛想をふりまき、コーヒーにお茶にケーキやジュースを出すのだった。それがまた、旦那には、女房の気遣いに思えて嬉しくて仕方なかった。外食では薬が入れにくいので、女房は滅多に外食などすることもなく、毎日、家で二人だけの食事を楽しむようになった。女房はちょっと気づきだしていた。何だか変だと…

〔再び病院で〕

 あれから、数ヶ月がすぎたある日のこと。女は医師のもとを訪れていた。

 『…あのお……先生……あの薬って本当に効くの? 本当に?…』

 『ええー、効きますよ。そうですか、もう半年になりますか。結構、飲ませたもんですねえ~。じゃあ、もう、そろそろ効いてくる頃ですよ。』

 しばらく沈黙が続いてから女が口を開いた。

 『あのお……あのさあ……アイツのことなんだけど……アイツ、結構、いい奴なんだよね……この頃じゃあ、あたしの料理が美味しいなんて言ってくれてさ。いつだって残したりしないで、全部食べてくれるし、だからね……だから、あたし……』

 女の顔をじっと見ていた医者がいいました。『だから?』

 『だからね……』女の瞳は何かをうったえようとしていた。

 『ほら、効いてきただろ。だから、あんたが一番望んだように、特によく効く薬を調合してあげたのさ』

 『だから、あたし……アイツに死んでなんか欲しくないんだ……あたしにだって悪いとこがいっぱいあったんだし、だからさ……先生、お願い、アイツを助けて……』

 医者はながいこと目をつぶり、何事かを考え始めた。

 そして、ゆっくりと目を開け、女の潤んだ瞳を見つめながら、こう言うのだった。

 『実はね、あの薬……』






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 医者はいったい何と言ったのでしょうか?

    答えはあなたが一番よく知っていますよね。







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 そうです。あなたの思ったとおりのことを言ったんです。

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